55歳や60歳。
多くの大企業では、この年齢をひとつの節目として**「役職定年」という仕組み**が存在します。
それまでマネジメントとしてチームを率い、
部下を育て、経営に提言し、会社の方針に声を上げることができた人が、
ある日を境に肩書を外される。
これを“単なる配置換え”と甘く見るのはとても危険です。
役職定年は、実際には「権限」と「裁量」を失うことを意味します。
そしてそれは、想像以上に働き方やモチベーションに大きな変化をもたらします。
■ 役職という肩書が支えていた心理的安全性
例えば、ある大手メーカーに勤めていた一人の部長の話を紹介します。
この方は55歳で役職定年を迎えました。
これまでは部長職として、現場をまとめつつ経営サイドにも提案を行い、
自らが組織の“良心”であり続けることで、会社の大企業病的な部分を抑制してきました。
組織が大きくなると、どうしても“前例踏襲”や“言われたことだけをやる文化”が
生まれやすくなります。
彼は、そんな閉塞感を打破しようと声を上げ、改善提案を出し続けてきたのです。
「前の良いところを活かしたい」
「会社をもっと良くしていきたい」
そんな強い思いを持ちつつも、実際に声を上げられるのは、
肩書きがあるからこそだったのかもしれません。
■ 役職が外れた瞬間に起こる現実
しかし、役職が外れると状況は一変しました。
“裁量”がなくなるのです。
提言をしても、「あなたはもう言われたことをやってくれるだけでいいですから」
と暗に示される。
これまで意見を言えていた場から、急に声を上げる権利を剝奪される感覚。
「この会社の体質を変えたい」という思いは残っているのに、
その手段を奪われるのです。
すると、
「自分がここにいる意味って何だろう?」
「自分の経験や考えは、もう誰にも求められていないのか?」
という疑問が渦巻き始めます。
役職というのは、単に“ポスト”ではなく、
「自分はこの組織の中で何者か」を証明する看板でもあったのだと痛感させられるのです。
■ 現場に戻る決意をした部長の例
役職を外されても、何もしない人もいます。
「どうせ何を言っても無駄だ」と諦め、
言われたことだけを黙々とこなす。
そのうち会社への不満だけが心の中に澱のように溜まっていく。
でも、その部長は違いました。
「裁量がないのなら、この会社でやりたいことはもうできない」と悟り、
別の道を探しました。
自分はまだ現場で技術者として価値を出せる。
自分の頭と経験を使って、誰かの役に立ちたい。
役職ではなく“技術者”として、裁量を取り戻したい。
そして当社の門を叩き、今は新しい現場で活躍しています。
“役職定年後のキャリア”に、真正面から向き合ったからこそできた決断です。
■ 役職がなくなったあなたは何者ですか?
役職を外された時にこそ、問い直してほしい言葉があります。
役職がなくなったあなたは、何者ですか?
「部長」「課長」「マネージャー」。
肩書は社内の序列であり、
組織の外に出れば瞬く間に無力化します。
特に転職市場では、役職自体に価値はありません。
重要なのは、その役職で何を実現してきたのかです。
・どんな課題をどう解決したのか
・どんな仕組みを残したのか
・どんな人を育てたのか
・自分は現場の何を知っているのか
肩書ではなく、あなたの経験と行動の軌跡を言語化することが、
これからの人生に必要な「武器」になります。
■ 現場復帰の不安を小さくする“整理”のすすめ
役職を外されて現場に戻る。
とても勇気が要ることです。
「今さら自分にできるだろうか?」
「若手と比べられて恥をかくのではないか?」
「昔のやり方が通用しなかったらどうしよう?」
そんな不安を拭うには、まずは自分を整理することです。
✅ 役職時代にどんな問題を解決したか
✅ どんな技術的な知識が今も活きるか
✅ どんな人との繋がりを活かせるか
✅ 自分が苦手なことは何か
✅ 新たに学び直すべきことは何か
頭の中にぼんやりあるものを、
言葉にし、紙に書き出すだけでも
不安は少しずつ輪郭を失い、行動に変わっていきます。
■ 「肩書がなくても価値がある人」の条件
私は多くの役職定年後の方と向き合ってきました。
現場復帰で再び輝いている人には、共通点があります。
それは
**「肩書に寄りかかっていなかった人」**です。
役職があるうちから、現場の動きを肌で感じ、
部下の声を聞き、トレンドを学び続けていた人は、
肩書がなくなっても、すぐに技術者として再始動できます。
逆に、役職の権威だけで人を動かし、
「俺の言うことを聞け」という態度でやってきた人は、
役職を外された途端に立ち位置を見失います。
■ あなたにしかできない貢献の形を探す
大企業に長く勤めてきた人ほど、
役職定年での現場復帰には大きな不安がつきまといます。
でも、あなたにはあなたにしかできないことがあります。
・若手にはない、現場と経営の両方の視点
・泥臭い現場の失敗から学んだリアルな知恵
・人と人を繋ぐ信頼関係
・人を育てる力
これらは、一朝一夕では身につかないものです。
■ 役職定年後の自分を強くするために
ぜひ、役職がなくなるタイミングを
“自分を棚卸しする機会”にしてください。
肩書がなくても、自分の経験とスキルは残ります。
その強みをどう使うかは、あなた次第です。
今は現場復帰を支援するエージェントや学び直しのサービスも増えています。
年齢を理由に諦めるのではなく、
あなた自身の価値を活かせる場所を探していきましょう。
■ まとめ
役職定年後に現場復帰するのは、決して“後退”ではありません。
むしろ、自分の力で価値を生み出す“第二の挑戦”です。
役職を外されたら終わりではなく、
その役職で何を実現してきたのかを整理し、
肩書なしでも語れる自分を作りましょう。
そして、
「役職がなくなったらあなたは何者ですか?」
という問いに胸を張って答えられる自分を、
一緒に目指していきませんか。
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