「年金、いつから受け取ればいいの?」——その迷いに答えます
60代になると、年金の「受給開始時期」をどうするかという現実的な選択に直面します。
なかでも話題になるのが、年金の“繰り下げ受給”。
- 働いているうちは年金をもらわない方がいいの?
- 何歳からもらうと、どれくらい差が出る?
- 将来を考えると、本当に“増える”のが得なのか?
この記事では、「60代で働いている・副業している人」向けに、
年金繰り下げのメリット・デメリットをわかりやすく整理します。
【1】繰り下げ受給とは? ざっくり解説
通常、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は65歳から受け取るのが基本ですが、
最大75歳まで受け取り開始を“遅らせる”ことができます。
この「遅らせること」を「繰り下げ受給」と言います。
▶ 繰り下げた期間に応じて、年金は増える
- 1カ月繰り下げるごとに 0.7%増額
- 65歳から75歳まで繰り下げた場合、最大84%増(月10万円 → 約18.4万円)
つまり「今はもらわない」代わりに、
将来もらえる年金額が“ずっと増える”制度なのです。
【2】どれくらい増える? 金額の具体例
以下は老齢基礎年金+厚生年金の月額が 15万円 の場合:
開始年齢 | 増減率 | 受給額(月) | 増える年額(概算) |
---|---|---|---|
65歳 | ±0% | 150,000円 | 0円 |
66歳 | +8.4% | 162,600円 | 約15万円増 |
68歳 | +25.2% | 187,800円 | 約46万円増 |
70歳 | +42.0% | 213,000円 | 約76万円増 |
75歳 | +84.0% | 276,000円 | 約150万円増 |
※上記は単純計算によるイメージです(税や保険料の控除は含まず)
【3】繰り下げのメリット——「まだ働く人」には合理的な選択肢
60代で転職したり、副業をしていたりして、まだ収入がある場合は、
すぐに年金を受け取る必要がない=繰り下げしやすい状況です。
▶ 働いているときに年金を受け取ると損?
一定の収入(年収130万円程度)を超えると、年金の「在職老齢年金」が一部減額される場合があります。
そのため、“年金を減らされながら受け取る”より“受け取らずに将来増やす”方が得なことも。
▶ 副業中の人こそ、受給タイミングを「キャッシュフロー」で考える
- 60代は“まだ稼げるけど、将来に備えたい”時期
- 年金を後に回すことで、「働けなくなったときの保障」として機能する
「今、月5万円稼げているなら、年金はあえてもらわない」
そんな設計ができると、人生後半の“安心残高”を増やせます。
【4】繰り下げのデメリット——“損する可能性”も正しく知ろう
もちろん、繰り下げにも注意点はあります。
▶ 長生きしないと「元が取れない」
目安としては、受給開始を1年遅らせると、元を取るのに約12年かかると言われています。
つまり…
- 66歳開始 → 約78歳で元が取れる
- 70歳開始 → 約82歳で元が取れる
- 75歳開始 → 約87歳で元が取れる
「元を取る」まで生きることが前提なので、健康状態や家系の寿命傾向も考慮が必要です。
▶ 働けなくなった場合に「収入ゼロ」になるリスク
- 働いている間に体調を崩した
- 仕事を突然辞めることになった
そうしたときに 年金もまだ出ない状態だと、生活に困ることに。
だからこそ、“いつでも切り替えられる”意識が大事です。
【5】働きながら「65歳以降に考えるべき」3つのポイント
① 「年金+副収入+貯蓄」の3本柱で設計する
→ 年金は「ベース」、副収入で「安心感」、貯蓄で「自由」
② 「何歳まで働くか」を自分の体力と気持ちで決める
→ 無理せず、年金とバランスをとる働き方に切り替えていく
③ 繰り下げする場合は、75歳までではなく“段階的”に設計を
→ 「68歳まで働けたら70歳受給にする」など、柔軟な戦略が◎
まとめ|“働けるうちは働く”人こそ、年金の繰り下げが活きる選択に
年金の繰り下げは、万能な正解ではありません。
でも、60代でまだ働いている・副業している人にとっては、
「年金を後に取っておく」という選択が、将来の心の余裕を生む武器になります。
- 増える金額を知る
- 自分の体と相談する
- キャッシュフローの設計を立ててみる
働きながらだからこそ持てる「時間」と「判断力」を活かして、
“じぶんのための制度活用”をしてみませんか?